厚生労働省の調査によると、作業療法士の平均年収は約432万円です。
これは全産業平均の458万円をやや下回っており、将来設計や生活の安定を考えると、決して十分とは言い切れないのが現状です。
しかし、作業療法士の経験を活かして副業という選択肢を上手に活用すれば、月に3万円〜10万円程度の収入アップも現実的に目指すことができます。
この記事では、実際に副業に取り組み成果を上げている作業療法士の実例を交えながら、無理なく始められて失敗しにくい副業の始め方を詳しく解説していきます。
作業療法士の副業は認められている?正しい手続きと現状
作業療法士の副業は、適切な許可を得れば法的に問題なく、多くの職場で認められつつあります。
ただし、職場によって就業規則が異なるため、事前の確認が不可欠です。
副業が認められているかチェック
まず大切なのは、今の職場で副業がOKかどうかです。
確認方法
- 就業規則を読む
- 不明な点は上司に相談
- 必要なら正式に許可を取る
最近は副業を認める職場が増えていますが、医療・介護の現場ではまだ慎重な施設も多いのが現実です。
これは単に本業への影響を懸念しているだけでなく、機密性の高い患者情報の管理や、専門技術・ノウハウの外部流出への警戒、さらには他の医療機関や事業所との利益相反を防ぐためといった、より根本的な理由があります。
隠れて副業をして後でトラブルになるよりも、最初にきちんと確認しておく方が安心です。
副業禁止の職場でバレるリスク
副業が禁止されている職場で隠れて副業をした場合、主に住民税の特別徴収によってバレるケースが最も多くなっています。
副業収入が年間20万円を超えると確定申告が必要となり、翌年の住民税額が本業の収入に見合わない金額になることで発覚します。
万が一バレた場合のペナルティは職場によって異なりますが、口頭注意から懲戒処分まで幅があります。
ただし、国家資格を保有している作業療法士は転職市場での需要があるため、最悪の場合を想定して転職も視野に入れることができるのが実情です。
作業療法士の副業については現在の職場のルールによって異なるため、①隠さず正式に申請する②副業許可のある職場に転職するという選択肢を検討するのがおすすめです。
次に、具体的にどのような副業があるのか、収入目安とともに詳しく解説していきます。
作業療法士が選ぶべき副業ランキングTOP4
作業療法士の専門性を活かした副業なら、時給1,500~3,000円程度の高時給が期待でき、月収3~10万円の収入アップが現実的です。
ここでは実際の求人データをもとに、始めやすさと収入のバランスを重視した副業を紹介します。
1位:訪問リハビリ(時給2,000〜3,600円の高収入が魅力)
時給相場:【訪問リハビリ】2,000~3,600円【施設系】1,500~2,100円
始めやすさ:★★★★★
訪問リハビリがダントツで高収入
作業療法士の副業で最もおすすめなのが訪問リハビリです。
- 時給: 2,000~3,600円
- 月収目安: 3~8万円(週1回4時間×月4回の場合)
- メリット: 高時給、経験の幅が広がる、本業のスキルアップにつながる
利用者さんの自宅でリハビリを行うため、責任は重いですが、その分しっかりとした報酬がもらえます。
車の運転ができて、ある程度の臨床経験(目安3年以上)があれば挑戦できます。
求人の探し方としては、PT・OT・ST専門の転職サイトや、地域のハローワークを活用するのが効率的です。
面接時には副業である旨を正直に伝え、勤務可能な曜日や時間を明確にすることが重要です。
2位:セミナー講師(1回で2〜10万円稼ぐ人も)
単発報酬:1~10万円
始めやすさ:★★★☆☆
一定の実務経験(目安5年以上)と専門分野での実績があれば、セミナー講師として活動することができます。
新人教育研修、専門技術講習、一般向け健康講座など幅広い機会があります。
報酬は講師の経験や知名度、セミナーの規模によって大きく異なりますが、1回2~3時間の講義で2~5万円が相場です。
継続的に依頼を受けられるようになれば、安定した副収入源となります。
始めるためには、まず職場内での新人指導や院内研修から経験を積み、徐々に外部での講師機会を増やしていくのが現実的なアプローチです。
日本作業療法士協会の各都道府県支部などに講師登録することも有効です。
3位:在宅ライター(文字単価1〜3円で自由な働き方)
文字単価:1~3円
監修報酬:3,000~30,000円/記事
始めやすさ:★★★☆☆
在宅でできる副業として人気が高まっているのが、医療・介護系メディアでのライティングや記事監修業務です。
作業療法士としての専門知識を活かして、一般向けの健康記事や介護情報記事を執筆します。
文字単価は実績により1~3円程度で、2,000字の記事なら2,000~6,000円の報酬となります。
記事監修の場合は、医学的な正確性をチェックする業務で、1記事あたり3,000~30,000円が相場です。
始めるには、クラウドソーシングサイト(ランサーズ、クラウドワークス等)で案件を探すか、医療系メディア運営会社に直接応募する方法があります。
最初は実績作りのため低単価でも受注し、徐々に条件の良い案件にチャレンジしていくのが一般的です。
4位:パーソナルトレーナー(時給1,500〜2,500円で健康指導)
時給相場:1,500~2,500円
始めやすさ:★★☆☆☆
作業療法士の身体機能に関する知識を活かして、スポーツジムやフィットネス施設でパーソナルトレーナーとして活動する選択肢もあります。
高齢者向けの運動指導や、障害者スポーツの指導なども需要があります。
ただし、別途トレーナー系の資格取得が求められる場合が多く、初期投資として10~30万円程度の費用がかかることがあります。
また、体力的な負担も考慮する必要があります。
地域の公民館での健康体操教室や、自治体の介護予防事業への参加から始めると、比較的取り組みやすくなります。
作業療法士がこれらの副業を検討する際は、必ず本業との兼ね合いを慎重に判断することが重要です。
次に、副業を始める前に確認しておくべき重要な注意点について詳しく解説します。
作業療法士の確定申告と注意点|安心して副業をするために
作業療法士が副業を始める前に、就業規則の確認、税務処理の理解、本業への影響評価を必ず行うことで、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
実際に副業でトラブルになった事例も踏まえて、具体的な確認ポイントを説明します。
就業規則と上司への相談方法
最も重要なのは、現在の職場の就業規則における副業規定の確認です。
多くの医療機関では「会社の許可なく他の職業に従事してはならない」といった条項があります。
副業禁止と明記されていても、事前相談により許可される場合があるため、隠れて行うのではなく正直に相談することが重要です。
上司への相談時は、「収入補完のため」「スキルアップのため」など明確な理由を説明し、本業に支障をきたさない範囲であることを強調します。
勤務日時や業務内容を具体的に説明し、利益相反にならないことを示すことが許可を得るコツです。
年収20万円の罠:知らないと追徴課税される確定申告ルール
副業収入が年間20万円を超える場合は確定申告が必要となります。
20万円以下でも住民税の申告は必要なため、正確な収支記録を保持することが重要です。
重要な注意点!”普通徴収でバレない”は本当?
副業がバレるのを防ぐため「住民税を普通徴収で」という方法がよく紹介されますが、重大な落とし穴があります。
副業が「給与所得」(他の病院・施設でのアルバイト)の場合、多くの自治体では複数の給与所得を合算し、本業の勤務先に合算後の住民税額を通知する仕組みになっています。
つまり、最も一般的な副業である「他施設でのアルバイト」では、普通徴収を選択しても本業の職場にバレるリスクが高いのが現実です。
作業療法士としての本業への影響は?体調管理について
副業による疲労が本業に影響することは、患者の安全に直結する重大な問題です。
週の副業時間は8時間以内に抑え、本業の休日は最低でも週1日は完全に休息に充てることが現実的な基準となります。
体調管理の指標として、「朝の目覚めが悪くなった」「患者との会話が億劫になった」「ミスが増えた」などの症状が現れた場合は、副業の頻度や時間を見直す必要があります。
また、守秘義務についても十分な注意が必要です。
本業で得た患者情報を副業先で話題にしたり、副業先の情報を本業で使用したりすることは厳禁です。
作業療法士の副業では、情報管理を徹底し、職業倫理を遵守することが不可欠です。
これらの基本的な注意点をご説明した上で、次に実際の副業の始め方について具体的な手順を説明します。
作業療法士の副業成功のコツは?初月から稼ぐために
作業療法士が副業を始めてから実際に収入を得るまでには、通常1~3ヶ月程度かかりますが、適切な準備と手順を踏むことで、より早期の収入獲得が可能になります。
ここでは、実践的な開始手順を紹介します。
作業療法士の求人探しと応募のコツ(非常勤の場合)
非常勤の副業求人を探す際は、PT・OT・ST専門の転職サイト(マイナビコメディカル、メドフィット等)を活用するのが最も効率的です。
一般の求人サイトでは医療系の非常勤求人が少ないためです。
応募時のポイントとして、履歴書には副業希望である旨を明記し、勤務可能な曜日・時間を具体的に記載します。
「土日のみ」「平日夕方以降」など、明確な条件を示すことで、双方のミスマッチを防げます。
面接では「なぜ副業をするのか」という質問に対して、「経験の幅を広げたい」「異なる症例に携わりたい」など前向きな理由を説明することが重要です。
金銭的な理由だけを述べると、印象が悪くなる可能性があります。
作業療法士のライター・講師系副業は実績作りが第一歩
ライターとして副業を始める場合、最初は実績作りのために低単価の案件から始めることが現実的です。
クラウドワークスやランサーズで「作業療法士が解説する○○」といったタイトルの記事を月2~3本執筆し、評価を蓄積していきます。
講師業については、まず職場内での新人教育や勉強会で経験を積みます。
その後、地域の介護事業所や地域包括支援センターの研修会で講師を務め、徐々に実績を作っていくのが王道のルートです。
プロフィール作成では、「○○分野で○年の経験」「○○の資格保有」など具体的な専門性をアピールします。顔写真も掲載することで信頼性が高まり、依頼を受けやすくなります。
初月から収入を得るためには時間配分が重要!
作業療法士が副業で早期に収入を得るためには、効率的な時間配分が重要です。
平日の夜2時間、土日のどちらか半日を副業に充てるパターンが最も現実的で持続可能です。
具体的なスケジュール例として、平日19~21時にライティング作業、土曜日午前中に非常勤勤務というパターンがあります。
これにより月20時間程度の副業時間を確保でき、月収3~5万円の収入が期待できます。
副業を始めてから実際に収入が得られるまでの期間は、副業の種類によって異なります。以下は、代表的な副業ごとの目安です。
副業の種類 | 収入が得られるまでの目安 | 特徴 |
---|---|---|
非常勤勤務(訪問リハビリなど) | 即日〜1週間程度 | 勤務開始後すぐに収入が発生しやすい |
医療系ライター | 2週間〜1ヶ月程度 | 初回の案件獲得に少し時間がかかる |
講師業(セミナー・研修など) | 3ヶ月〜6ヶ月程度 | 実績づくりや信頼構築に時間が必要 |
それぞれの副業に応じたスケジュール感を把握しておくことで、無理のない計画が立てやすくなります。
最後に、副業で失敗するよくあるパターンをご紹介します。
作業療法士が副業で失敗する5つのパターン
作業療法士として副業を始める前に、よく報告される失敗パターンを知っておくことで、同じ過ちを避けることができます。
失敗パターン①:「簡単に稼げる」と甘く見て準備不足
対策: 病院と在宅では求められるスキルが大きく異なることを理解し、事前の研修や見学が重要です。
失敗パターン②:時給の高さだけで副業先を選んで後悔
教訓: 時給だけでなく、移動時間・交通費・準備時間を含めた総合的な収支を計算する。
失敗パターン③:「実績作り」で安売りしすぎて抜け出せない
教訓: 作業療法士の専門性は十分価値がある。最初から適正価格(文字単価1円以上)で勝負する。
失敗パターン④:副業先での人間関係でトラブル発生
教訓: 副業先では「お客様」ではなく「新参者」の立場。郷に入っては郷に従う謙虚さが重要。
失敗パターン⑤:確定申告を後回しにして大慌て
教訓: 副業開始初日から収支の記録と領収書の保管を習慣化する。
作業療法士が副業で失敗を避けるための3つのポイント!
副業を成功させるためには、よくある失敗をあらかじめ知っておくことが大切です。特に注意したい3つのポイントを紹介します。
ポイント | 内容 |
---|---|
① 事前にしっかり調べる | 職場の雰囲気やルール、実際の働き方などを確認。可能であれば、副業経験のある同僚から話を聞いておくと安心です。 |
② 安売りしない | 作業療法士としてのスキルや専門性には価値があります。安易に報酬を下げると、自分を苦しめる結果になりがちです。 |
③ 記録をつける | 副業で得た収入や支出、使った時間はこまめに記録。確定申告や時間管理にも役立ちます。 |
これらのポイントを意識しておくだけでも、副業をより安全に、そして効率的に進めることができます。
作業療法士の副業は短期的な収入アップだけでなく、スキルの向上や人脈の拡大にもつながります。
自分に合った副業を選択し、本業とのバランスを保ちながら、作業療法士としてのキャリアをより豊かなものにしていきましょう!