作業療法士の男女 作業療法士

作業療法士の男女比は女性6割!知っておきたい給料と昇進の課題

作業療法士を目指す方や転職を考えている方にとって、「作業療法士の男女比」は気になるポイントの一つではないでしょうか?

2023年度の最新統計によると、日本作業療法士協会に所属する会員のうち、女性が約61%、男性が約39%を占めており、作業療法士は女性が多数を占める職業であることがわかります(日本作業療法士協会「2023年度会員統計資料」より)。

この男女比には、作業療法の業務内容や働き方、さらには日本独特の社会的背景が関係しており、単なる数値だけでは読み取れない事情があります。

本記事では、作業療法士の男女比の実態とその背景、男女それぞれの働きやすさや課題について、最新のデータをもとに詳しく解説します。

作業療法士の男女比の実態|年齢とともに女性が減る意外な理由

統計イメージ

作業療法士の男女比は女性約61%、男性約39%となっています。

実は、この数字は理学療法士とは正反対の構成になっています。

理学療法士では男性約60%、女性約40%と男性が多いのに対し、作業療法士は明らかに女性中心の職業です。

出典:日本作業療法士協会「2023年度会員統計資料」

年齢が上がると女性の割合が減る?

興味深いのは、年齢層によって男女比が変わることです。

最も人数の多い26~30歳の世代では、女性が男性の約1.75倍存在します。

ところが、キャリアの中盤である46~50歳の世代では、その比率は約1.37倍まで縮小します。

具体的な数字で見ると、26~30歳では女性8,148人に対して男性4,642人ですが、46~50歳では女性3,658人に対して男性2,671人となっています。

出典:日本作業療法士協会「2023年度会員統計資料」

この現象は偶然ではありません。

女性作業療法士が年齢を重ねる過程で、男性に比べてより多く現場から離れていることを示しています。

これは、出産や育児といったライフイベントによって、女性の方がキャリアを中断せざるを得ない状況が多いことの証拠と考えられます。

養成校の時点で女性が多数派

この男女比は、実は養成校の段階で既に決まっています。

作業療法士養成校では女性約6割、男性約4割という比率が一般的で、国家試験でも同じような受験者構成になります。

国家試験の合格率は近年80~90%で推移しており、比較的高い合格率となっています(厚生労働省国家試験合格発表データより)。

作業療法士の養成校での男女比がそのまま女性約61%、男性約39%という比率に反映されているのが実情です。

次に、この男女比が実際の職場でどのような環境を作り出しているのか、そして働く人たちが直面している現実的な課題について見ていきましょう。

職場環境と給料の男女格差|管理職は男性中心の現実

作業療法士の男女比を見ると、女性が約6割を占めており、職場は女性中心の環境になっています。

そのため、従来の医療現場とは少し違った、柔らかい雰囲気が生まれているのも特徴です。

しかし、作業療法士の職場は女性が多いからといって、必ずしも女性にとって働きやすい環境が整っているとは限らないということが、最近の調査から明らかになってきました。

女性にとっての職場環境:理解はあるが昇進は難しい

女性が多数を占める職場では、確かにライフイベントへの理解は得られやすくなります。

産休・育休制度の利用率も高く、同僚の多くが女性なので「こどもが熱を出したので早退します」といった状況にも理解が得られやすいという声もあります。

ところが、深刻な問題も隠れています。

最も顕著なのが「管理職になれない問題」です。

作業療法士全体の約61%を女性が占めているにも関わらず、管理職や指導的な立場では男性が圧倒的に多くなります。

給料格差は年齢とともに拡大

この管理職比率の低さは、給料にも直結します。

平均年収を見ると、男性が約427万円に対し、女性は約396万円となっており、その差は約30万円にもなります(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」に基づく分析)。

さらに問題なのは、この差がキャリアを重ねるごとに広がることです。

男性作業療法士:少数派ゆえの特別感と責任

男性が少数派の環境では、逆に重宝される面があります。

特に男性の患者さんからは「同性の作業療法士の方が話しやすい」という声が多く、精神科や高齢者施設では男性作業療法士への需要が高まっています。

また、数字で見ると管理職に昇進するチャンスが比較的多く、リーダーシップを発揮する機会も与えられやすい傾向があります。

ただし、これは男性の能力が特別高いからではなく、職場の構造的な問題によるものと考えられます。

男性特有の課題として、育児休業の取得率の低さがあります。

過去のデータを見ると、男性の育休取得率は2007年度でわずか1.56%、2011年度でも2.63%という極めて低い水準でした(機関誌『日本作業療法士協会誌』 )。

「育児は女性の仕事」という意識が今も根強く残っていて、育児の負担が女性に偏りがちです。

こうした作業療法士の男女比の現状と男女の格差は今後の重要な課題になっています。

今後の作業療法士という職業がどう変わっていくのか、そして性別に関係なく活躍するために何が必要なのかを解説していきましょう。

作業療法士は将来どうなる?男女がともに活躍するための変化

作業療法士の男女比は今後どう変わり、どんな課題を解決していく必要があるのでしょうか。

現在のデータと社会の流れを分析すると、女性の割合はさらに増える一方で、構造的な問題の解決が急務となっています。

女性比率はさらに上昇へ

現在の養成校における女性入学者の割合(約65-70%)を考えると、2030年頃には作業療法士全体の女性比率が65%程度まで上がる可能性があります。

この変化の背景には、介護分野での作業療法士需要の増加と、生活支援を重視した作業療法への社会的な関心の高まりがあります。

しかし、単に女性の数が増えるだけでは根本的な問題は解決しません。大切なのは、男女が共にキャリアを続けられて、能力に応じて昇進できる環境を作ることです。

問題解決のために必要な取り組み

真の男女平等を目指すには、次のような取り組みが欠かせません。

1. 男性の育児休業取得を「当たり前」にする

重要なのは、男性が育児休業を取ることを普通にすることだと多くの専門家が指摘しています。

すでに先進的な医療機関では、男性の育休取得率が70%を超えている例もあります(医療機関の求人情報より)。これは決して不可能な目標ではありません。

男性も育休を取れるようになれば、こどもを持つことによる「キャリアへの影響」を、男女で公平に分かち合えるようになります。

2. 働き方の選択肢を増やす

たとえば、短時間正社員制度や、仕事内容に応じた在宅勤務の導入が効果的です。

これにより、出産・育児・介護といったライフステージの変化によって、優秀な人材が仕事を辞めざるを得ない状況を防ぐことができます。

作業療法士の仕事は対面業務が基本ですが、記録作業やオンライン会議など一部の業務において、在宅での対応が可能な職場も出てきています。

ただし、制度や現場の事情から、在宅勤務の導入はまだごく限られた範囲にとどまっています。

3. 昇進の評価方法を見直す

「勤続年数が長い人が昇進する」という評価軸だけでは、休業や時短勤務を経験した人が不利になります。

これからは、休業中に取り組んだ学びや、復帰後の成果などをしっかり評価し、能力を重視する制度に見直していく必要があります。

作業療法士としての戦略とキャリア形成

作業療法士を目指している方や、すでに働いている方にとって大切なのは、専門性を磨くことです。

上位資格の取得を目指そう

たとえば、

  • 認定作業療法士(一定の経験と研修を積んだ作業療法士に与えられる上級資格)
  • 専門作業療法士(特定分野で高度な知識と技術を持つと認められた最上位資格)

といった資格を取得することで、性別に関係なく「専門性」で評価される立場を築けます。

働きやすい分野の選択もポイント

在宅リハビリや福祉分野は、比較的スケジュールの調整がしやすく、家庭との両立がしやすい働き方が可能です。

また男性作業療法士の場合は、

  • 精神科領域での男性患者向けプログラムの開発
  • スポーツリハビリテーションの分野での活躍

など、男性ならではの視点を活かせる専門分野での活躍も期待されています。

これからの作業療法士に求められる姿勢

今後は、性別にとらわれず、一人ひとりの専門性や適性に応じたキャリア形成がますます重要になります。

作業療法士という仕事の魅力は、男女それぞれの強みを活かせる多様な働き方ができる点にあります。

現在の構造的な課題を理解しながら、自分の興味や強みを見つけ、長期的なキャリアプランを描いていくことが、作業療法士として長く活躍するために重要となっていくでしょう。

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