「作業療法士として、この先本当に大丈夫?」そんな不安を抱えている方へ。
結論から言うと、作業療法士の将来性は十分にあります。
ただし、すべての作業療法士が安泰というわけではありません。
実際に、作業療法士の有効求人倍率は4.14倍です。これは全職種平均の1.29倍を大幅に上回る数字で、需要は高い状態が続いています(厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag))。
しかし一方で、資格を取る人は毎年約5,000人ずつ増えています。競争は確実に激しくなってきているのが現実です。
この記事では、作業療法士の将来性について分析します。そして、将来にわたって価値ある作業療法士として活躍し続けるための具体的な方法をお伝えします。
作業療法士の将来性は本当にあるのか?5つのデータで検証
作業療法士の将来性について、感情論ではなく客観的なデータで判断してみましょう。
需要について:高齢化社会が生む確実な需要
将来性あり
令和19年には3人に1人が65歳以上になります(内閣府|令和6年高齢社会白書)。これにより、作業療法士の需要はもっと増えると考えられます。
認知症の患者さんも増えることが予想されており、要介護の認定を受ける人も増える傾向にあります。
また、政府が力を入れている地域包括ケアでも、作業療法士の役割はますます重要になっています。
供給について:資格を取る人の急増による競争激化
注意が必要
一方で、作業療法士になる人も増え続けています。
日本作業療法士協会の統計によると、毎年約5,000人のペースで新しい作業療法士が誕生しており、有資格者数は継続的に増加しています(厚生労働省_2024年|第59回作業療法士国家試験)。
この結果、都市部の人気病院では求人に対してたくさんの人が応募する状況になっています。
資格を持っているだけでは、希望する職場に入るのが難しくなってきました。
AI・ロボットに仕事を取られるリスクは少ない
将来性あり
「AIに仕事を取られるのでは?」という不安を持つ人もいるでしょう。
しかし、野村総合研究所とオックスフォード大学の研究によると、作業療法士がAIに代替される可能性は極めて低い職業として挙げられています(野村総合研究所「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」)。
なぜかというと、患者さんとの関係作り、一人ひとりに合わせた問題解決、心のサポートなど、AIでは真似できない能力が作業療法の中心部分だからです。
患者さんとの信頼関係がリハビリの効果を左右し、一人ひとり違う状況に合わせた対応が必要です。
これらは、まさに人間にしかできない仕事と言えるでしょう。
分野別の需要は?:成長分野と停滞分野がはっきり分かれる
分野選択次第で将来性あり
すべての分野が同じように発展するわけではありません。
訪問リハビリは在宅医療のニーズが拡大しているため、成長分野とされています。
発達障がいの支援も、診断されるこどもが増えているため需要が拡大している分野です。
一方で、回復期病院や急性期病院は競争が激しくなっており、これまでのような安定した成長は期待しにくくなっています。
どの分野を選ぶかが、将来性を大きく左右することになります。
年収の変化:正しい方法で500万円超えも可能
やり方次第で将来性あり
経験を積むにつれて、年収は着実に上がっていきます。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」を見ると、以下のようになっています(厚生労働省 賃金構造基本統計調査)。
- 1~4年目:平均369万円
- 5~9年目:平均402万円
- 10~14年目:平均447万円
- 15年以上:平均501万円
経験を積んだ作業療法士の中には、もっと高い年収を実現している人もいます。
ただし、これには適切な方法とキャリア作りが必要です。
なぜ将来性に差が出るのか?そのカギは「学び続ける姿勢」
同じ作業療法士でも、キャリアの将来性には大きな差が出てくることがあります。
では、その違いはどこにあるのでしょうか?
こんな行動が将来性の妨げになるかも?
作業療法士の資格を取得したあと、「今のままでいいかな」と感じてしまう方もいるかもしれません。
ただ、研修や勉強会などの学びの機会をあまり持たない状態が続くと、少しずつスキルや知識に差が生まれてしまうこともあります。
また、転職の際に給与面だけで職場を決めてしまうと、将来的な成長の機会を見逃してしまうことも。
業界の変化や制度の動きにあまり目を向けないままだと、変化への対応が難しく感じられる場面も出てくるかもしれません。
将来性を高めるために意識したいこと
一方で、スキルアップを日々意識している方は、着実にキャリアの幅を広げています。
たとえば、年に何度も研修に参加したり、認定作業療法士の資格取得を目指したりするなど、専門性を深める努力を続けています。
転職においても、自分の将来を見すえた上で経験を積む職場を選び、「成長」と「安定」の両方を意識しています。
また、業界の最新情報にもアンテナを張り、常に変化に柔軟に対応しています。
こうした日々の意識や取り組みの差が、結果的に将来の収入や働き方にもつながっていくことがあるのです。
作業療法士としての将来性を高めよう!3つの戦略
競争が激しくなる中で、将来にわたって価値ある作業療法士として活躍するための具体的な方法をお伝えします。
戦略1:成長分野で経験を重ねていく
これからの社会でニーズが高まる分野のひとつが「訪問リハビリ」です。
在宅医療の分野は今後さらに成長が見込まれており、この分野での経験は、ご自身の市場価値を高めるうえでも大きな強みになります。
今すぐできること
まずは、訪問リハビリの求人を調べてみたり、見学を受け入れている事業所があれば連絡してみましょう。
あわせて、在宅医療に関する本を読んで、基礎知識をつけておくのもおすすめです。
3ヶ月以内にやってみたいこと
訪問リハビリに関する研修に参加してみましょう。
福祉住環境コーディネーター2級などの資格取得も検討してみてください。
今の職場に経験者がいれば、ぜひ話を聞いてみましょう。
6ヶ月以内にチャレンジしたいこと
転職エージェントに登録してみて、自分の経験やスキルがどのように評価されるかを知ることも大事です。
タイミングが合えば、少しずつ転職活動を始めるのも良いでしょう。
戦略2:専門性を深めて資格を取得する
「認定作業療法士」は、まだ取得者が少ないため希少価値が高く、転職時にもプラスに働く資格です。
資格の取得について
取得には一定の実務経験や研修が必要ですが、専門性を高めることができ、年収アップやキャリアの幅を広げるチャンスにもつながります。
資格取得の流れ(例)
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1~2年目:基礎研修を受けたり、学会発表の準備を始めたりします。症例レポートを少しずつ積み重ねていきましょう。
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3~5年目:認定作業療法士の申請に向けて、専門分野を決め、研究活動にも取り組んでいきます。
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6年目以降:さらに専門性を高めて「専門作業療法士」を目指すこともできます。管理職や教育的な立場での活躍も視野に入り、キャリアの選択肢が広がっていきます。
戦略3:市場での価値を継続的に高めていく
現在、作業療法士は需要の高い職種ですが、希望に合った職場で働くには、計画的な行動が大切です。
幅広い経験を積むことのメリット
急性期や回復期、訪問リハビリ、身体障害や精神科、発達分野など、複数の領域で経験を積むことで、どの現場でも通用する力が身についていきます。
成果をわかりやすく伝える工夫
担当した患者さんの変化や、後輩の指導経験、新しく取り入れたプログラムの成果など、数字や事例で伝えられる実績を意識して記録しておくと、自分の成長を振り返るきっかけにもなります。
外部とのつながりを大切にする
学会や研修を通じた交流、転職エージェントからの情報収集、SNSでの情報発信など、外とのつながりを持つことで、新しいチャンスが見つかることもあります。
できるところから少しずつ、情報を集めたり、人に相談してみることが第一歩になります。
作業療法士の将来性は、日々の積み重ねから広がっていきます。
AIとともに築く、作業療法士の将来性
AIの進化は、作業療法士にとって脅威ではありません。
むしろ、人にしかできない専門性を発揮するチャンスが広がっているとも言えます。
これからの時代に求められる作業療法士の役割を理解し、将来性を高めていくことが重要です。
AIが担う業務と今後の変化
これからの10年で、AIはさまざまな場面で活用されていくと考えられています。
たとえば、事務作業や記録の作成、リハビリ計画書の作成など、定型的な業務はAIに任せられるようになるでしょう。
また、過去の症例データを使って改善の見込みを予測したり、センサーで動作を分析したりといった技術も進化しています。
人にしかできない専門性は、将来性の源になる
一方で、患者さんとの信頼関係を築いたり、一人ひとりに合わせたリハビリプランを考えたり、ご家族の気持ちに寄り添った対応は、人間の判断力と共感力が不可欠な領域です。
これらは、今後も作業療法士にしかできない大切な役割です。
将来性を高めるために身につけたい力
これからの作業療法士には、「人にしかできない対応力」と「テクノロジーを活用する力」の両方が求められます。
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リハビリ支援アプリや遠隔リハビリなどのICTツールの活用
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VR・AR技術などの最新リハビリ手法への理解
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AIが対応できない複雑な症例への専門的アプローチ
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患者の心理や社会的背景に寄り添う柔軟な対応
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チーム医療の中心としての連携・調整スキル
これらの力を高めることで、AI時代でも選ばれ続ける作業療法士としての将来性を築いていくことができます。
年代別に考える作業療法士の将来性戦略
あなたの年齢に合った戦略を知り、作業療法士の将来性を高めていきましょう。
20代(経験1~5年):将来性の基盤をつくる時期
この時期は、できるだけ多くの経験を積みながら基礎をしっかり固めることが大切です。
目標年収は350万円から420万円程度を目指しましょう。
2〜3分野での経験を積み、基礎研修を受講し、将来の転職を見据えて情報収集も始めてみてください。
例えば、新卒で急性期病院に入り、数年後に回復期や訪問リハビリに移るキャリアは、経験の幅が広がり将来性アップにつながります。
30代(経験6~15年):将来性を高める専門性の確立期
この時期は認定資格の取得や管理職への道を意識し始める大切な時期です。
目標年収は420万円から520万円程度を目指しましょう。
認定作業療法士を取得し、マネジメント経験を積み、専門分野での信頼を得ていくことが将来性を高めるポイントです。
成功例としては、認定作業療法士を取得後に主任や管理職候補として転職し、キャリアアップとともに年収も伸ばすパターンがあります。
40代以降(経験16年以上):将来性を最大化し価値を発揮する時期
この年代では、専門家や管理者としての確かな地位を築くことが求められます。
目標年収は500万円以上を目指し、さらなるキャリアアップを目標にしましょう。
専門作業療法士の取得や管理職、施設長への昇進、教育や研究活動での知名度向上などが、将来性を大きく左右します。
このステージでは、「患者さんを治療する力」から「チームをまとめる力」へと役割が変わるため、後輩育成やチーム連携、予算管理などのスキルを磨くことが昇進や独立開業へのカギとなります。
どの年代でも、着実に経験とスキルを積み重ねていくことで、作業療法士としての価値向上・将来性がしっかり開けていきます。
焦らず、自分のペースでキャリアを積んでいきましょう。
作業療法士の将来性は確実にあります。ただし、それを実現できるかどうかは、あなたが今日から取る行動次第です。
競争が激しくなる中で生き残り、さらに飛躍するために、ぜひ今日から計画的なキャリア作りを始めてください。